
館内のアート作品のご紹介
館内に流れる音楽、窓の外に広がる自然、静けさに包まれた客室。
それらと調和しながら、時に静かに心を惹きつけ、時に深い安らぎをもたらす―。
ホテルグランバッハ熱海クレッシェンドのアート作品は、より滞在を豊かにする要素として、山、海、風、水といった自然の要素から受け取る感覚や記憶を想起させ、旅の記憶とともにそっと心に残る存在となることを目指しています。
また、J.S. バッハの名を冠するホテルとして、作品を生み出したアーティストの想いにも敬意を払っています。
滞在の中で出会った一枚の絵と、その作家の名前が静かに結びつき、心に残ること。
それもまた、当ホテルならではの体験のひとつです。
野地 美樹子 「紅白梅」
熱海梅園で出会った、鮮やかでありながら柔らかな色彩を放つ紅梅「八重唐梅」。
その美しさに魅了され、奥に控える白梅とともに華やかに描いた作品です。熱海といえば海の景観が想起されがちですが、本作では春を象徴する梅の生命力に焦点を当て、その魅力を引き出しています。
一年を通じて、熱海の梅の美しさを楽しんでいただきたいという筆者の想いが込められています。
山本 基 「時の輪郭」
東洋における再生の象徴「渦巻き」をモチーフにした作品です。
山本基の代名詞である塩のインスタレーションを想起させるように、ガラスの繊維を混ぜたアクリル絵の具で描かれ、塩の結晶の質感を模した線で画面が構成されています。
作家・山本基にとって線を描く行為は過去の記憶をたどる旅であり、その中に個人的な祈りや、生と死への問いに対する彼なりの応答が込められています。
連続する渦巻きは、尽きることのない想いの連なりを示し、よみがえりや再生、そして永遠という概念を静かに語りかけます。
また、金箔を用いた画面には、古今東西で永遠を象徴してきた「金」という素材に込められた時間の輝きが重ねられています。
「時の積層」
「時の積層」シリーズでは、一度引かれた線の上に、まるで記憶をなぞるように幾重にも線が重ねられています。
繰り返し描かれる渦巻き模様は、静かに、しかし確実に積み重なる時間を表し、それぞれの線が作家本人の体験や思索の痕跡として画面に留まります。
描き重ねられることで深まる線の濃度や揺らぎは、深い影を落とし、時の経過や記憶の複雑さ、再生のプロセスそのものを可視化しています。
また、金箔の使用により、永遠性を内包した時間の層が静かに輝きを放ちます。
中村 公紀 「Clover」
日常の中で見つけた花や植物を撮影し、そのイメージをコンピューター上で分解・再構成したものをもとに描いた作品。
かすかに元の植物の雰囲気を残しつつも、鑑賞者の視覚体験や記憶、さらには観る場所やタイミングによって、それぞれ異なる印象を与えるものになると考え、植物の「クローバー」をモチーフにしています。
音楽の広がりや、食事の味覚が広がる瞬間をイメージした作品です。
「Angelonia」
日常の中で見つけた花や植物を撮影し、そのイメージをコンピューター上で分解・再構成したものをもとに描いた作品。
かすかに元の植物の雰囲気を残しつつも、鑑賞者の視覚体験や記憶、さらには観る場所やタイミングによって、それぞれ異なる印象を与えるものになると考え、植物の「アンゲロニア」をモチーフにしています。
音楽や食事の中で交わされる会話のリズムや流れる時間をイメージした作品です。
「Canna」
カンナの花が元になっている3点の連作。
水辺の景色の中を飛び回るようなイメージで制作された作品です。
部屋からの眺望と共に躍動感とそれぞれの作品の印象の違いをお楽しみください。
「Iris」
アイリスを元に、海景のような空間の前面に漂い浮遊する様をイメージした作品。
「Geranium 」
ゼラニウムを元に、風や流れを感じさせるようにイメージした作品。
栗原 あき 「Accordionist」
部屋でアコーディオンを練習する人
楽器を演奏する人すべてが持っている楽器を練習するという時間を穏やかに美しく描いた作品です。
「A guitarist」
ギターを弾いている女性
小さい画面にあえて人を大きく描くことで部屋や小物とのバランスを取り、平面的に描いた作品。
マティスの習作作品に影響を受けた作品です。
「Cellist」
チェロを弾く人
チェロを奏でる人物を中心に据え、その身体の動きが生み出すダイナミックな表現を追求した作品。
「A room with the sound of a piano」
夕陽で黄色く染まる部屋、ピアノの音色と色が滲み溶け合うような時間
広い部屋にピアノが響いている様子を描くため、視野が広がるように構図を工夫して描かれた作品。
部屋全体が夕陽に染まっているように見せるため、絵具を何層にも重ねて表現されています。
「Beach」
誰の心にもある海の記憶 風を感じられる砂浜とゆったりとした時間
砂浜の情景を描くと同時に、目には見えない風の存在までも感じられるように、多くの鳥が飛び交う情景を描いた作品。
豊かな自然の中に身を置くとき、人もまたその一部となることができるという作者の想いが込められています。
「Resonant moment」
バイオリンの音色に寛ぐ人、生が音色と光に共鳴するの豊かさの一瞬
アンリ・マティスやミルトン・エイブリーが用いた赤や構図を意識した作品。
画面中央に赤いテーブルを配置することで、自然と視線がそこへ導かれるよう工夫されています。
「A moment of rest」
過ぎ去った時間の余韻とこれから訪れる何かへの予感、その間の休息時間
室内にいるようでありながら、あえてアンバランスな奥行きやパースを描くことで、不完全さを表現した作品。
さらに、黄色い花やカーペット、壁をパターン化することで、平面感が出るよう制作されています。
「Ocean view」
海と風に身をゆだねられる場所、解放された眺めの場所
海に近い情景を描いた作品。
潮風や潮の香り、そしてその中でくつろぐ人々の気配が感じられるように描かれています。
また、海の青が美しく映えるよう、色彩にも工夫が施されています。
「Twilight」
黄昏時、ディナーの前の心地よいひと時 風が気持ちの良い時間
柔らかな夕暮れの光の中、屋外に置かれた食卓を囲む人々の静かなひとときを表現した作品です。
にじむような色彩と輪郭によって、すべてが許容され、包み込まれているような空気感が表現されています。
ラファエル・バーター 「 When you Reach the Coastline 」
固定された目的地を示すのではなく、立ち止まり、観察し、人間と自然、存在と生成の間にある流動的な境界を問いかける作品です。
自然を物理的な風景であると同時に、内面世界の鏡として捉える作者の継続的な探求を反映しています。
光は中心的な役割を果たし、空間を形作ると同時に、記憶のはかなく断片的な性質を呼び起こし、層状に重ねられた絵画の制作過程は、変化の価値に対する作者の信念を強調しています。
固定された場面を描くのではなく、美しさ、不確実性、内省が共存する生成の動的な状態を捉えた作品です。
「 Wandering Hills 」
地理的な風景ではなく、「存在」の風景を描いた作品。
自然が夢のように広がり、感情や時間の流れによって形を変えた世界を表現しています。
半抽象的な形で、柔らかな黄土色の丘や蛇行する小川、ピンクや淡いアクアに包まれた遠くの峰々が描かれ、作家自身の内面の風景を映し出す内省の場としても機能しています。
作品の中で、丘はただ「さまよう」のではなく、思考のように漂い、静と動のあいだで微妙なバランスを保っています。
色や質感の重なりによって、自然の記憶が身体に残り、孤独や憧れ、内省を通して変化していく様子を伝える作品です。
「 Glimpse of a Lake Between Hills 」
記憶と抽象を通して捉えた自然のはかない印象を描いた作品。
柔らかなピンクやアーシーグリーン、黄土色の層が重なり、丘が淡い湖をやさしく取り囲む夢のような風景を表現しています。
質感の対比や絵具の濃淡が奥行きやリズムを生み、通り過ぎる風景の儚さを呼び起こします。
直感的な構図と即興的な表現のバランスにより、むき出しのキャンバスや色の重なりが作品に呼吸感を与え、場所や記憶、風景の持つ感情的な響きを映し出しています。
ラファエル・バーダ 「 See Vastness Between Trees 」
記憶と自然が詩的に結びつく空間を描いた作品。
木々は通路のように立ち、その間に広がる空間は物理的な広がりとともに、感情的な広がりも感じさせます。
拡散した光が輪郭をやわらげ、現実と想像の境界を曖昧にすることで、風景に内面の感覚が重なります。
また、無常や帰属意識、憧憬や移ろい、つながりの可能性といったテーマが織り込まれており、光は自然と内面を結びつける力として描かれています。
抽象化された形や柔らかな色調を通して、空間と心の広がりが同時に感じられ、木々の向こうの風景と鑑賞者の内面が重なることで、「広がり」は目に見える世界だけでなく、心の内側にも存在していることを示しています。
「 Blue Moon Between Clouds 」
抽象表現と自然の象徴を鮮やかに組み合わせ、風景の文字通りの姿ではなく、感情的な本質を捉えた作品。
大胆な青い樹木が画面の中心に立ち、起伏する丘や雲のような形がテクスチャーのあるパステルやアーストーンで描かれています。
その上空には、深いウルトラマリンの三日月が輝き、柔らかなラベンダーやクリーム色の空に浮かんでいます。
厳密な構造を避け、ジェスチャー的な筆跡や重ねられた色面で展開される画面は、特定の地理ではなく「場所の記憶」を呼び起こします。
作家の旅や一時的な体験が視覚表現に反映され、風景は単なる地理ではなく、内面の思索や時間によって形作られていることが感じられる作品です。
「 A Pink Stream in the Undergrowth 」
森を色彩と形の重層的な抽象として描いた作品。
有機的な構造が大胆なピンク、グリーン、バイオレットに溶け込み、夢のような風景を生み出しています。
小川や森の小径を思わせる中央のピンク色の道筋は、苔の緑や深いバイオレット、濃いチャコールの下草を蛇行して抜け、ミントやライラック、クリムゾンの鮮やかな色が動きと光を添えることで、平坦な面と筆致の対比が統制と即興性の交錯を生み出しています。
感情によって形作られた内面の地形を映し、観る者を不思議に親密でありながらも未知の世界へ誘う作品です。
「 Ascent in the Morning Air 」
光と高低によって動きを帯びた山岳の風景を描いた作品。
柔らかなピンク、黄土色、グリーンを基調に、静と動が同時に存在する情景を作り出しています。
縦に伸びる構図では、淡いグリーンの峰が黄土色やテラコッタの帯を貫き上昇し、上方の空を鮮やかな赤の一筋が横切ることで、静寂の中に変化とエネルギーを感じさせ、黄色や赤のテクスチャーが微細な動きとリズムを生み出します。
象徴的な風景として、空気、光、土地が繊細に出会う場所を体験させる、静かで力強い作品です。
「 A Blue Stream Under the Sun 」
場所の雰囲気と地形の特徴を抽象的に表現した作品。
青い小川が深い緑や黄土色、バーガンディの丘を蛇行し、温かみのあるピンクの背景に溶け込んでいます。
上方の鮮やかなオレンジは低い太陽を表し、光や空気の変化を感じさせます。
抽象的でありながら、視覚ではなく感覚で場所の存在を伝え、記憶や地形、感覚を一つの画面にまとめた作品です。
「 Silent Path Into the Woods 」
静かで力強い森の情景を、色彩と形で表現した作品。
色や形が、記憶や感情、自然の緊張感を象徴しています。
左右から迫る濃い緑の形が輪郭の異なる色で縁取られ、目を淡いミントやラベンダーの光に導き、赤みのオレンジやくすんだモーブの点は、下草や落ち葉を連想させます。。
完全に抽象でも具象でもないこの作品は、暗示を通じて語りかけ、森の「絵」を描くのではなく、そこを歩き入るときの感覚を伝えています。
「 Where to Observe How Things Form 」
観察そのものを生成の行為として描いた半抽象の作品。
観る者は単に形を眺めるのではなく、形成の過程に触れるように誘われます。
土の赤、落ち着いた紫、淡い黄土色が層となって重なり、時間の経過による堆積や浸食を感じさせ、柔らかな輪郭や曖昧な空間は明瞭さと不明瞭さの共存を映し出し、筆致や質感は作家の内省の旅を伝えます。
自然との深い関わりを基に、形・色・筆の動きが自然の流動的なリズムを模した、静かで瞑想的な作品です。